【言語文化・古典探究】大鏡 〜 花山院の出家① 〜 解説と練習問題(PDFダウンロード可能)

古典読解

大鏡の「花山院の出家・花山院の退位」の解説と問題を無料で閲覧・ダウンロードすることができます!

大鏡とは

「大鏡」は平安時代後期の白河院の時に書かれた歴史物語です。

作者は不詳で、摂関家に近い男性官人が書いたとする説が有力です。

内容は850年の文徳天皇から、1025年の後一条天皇までの14人の天皇が在位した176年間の歴史を、大宅世継(オオヤケノヨツギ)と夏山繁樹(ナツヤマシゲキ)が対話し、それを若侍が批評するという形式で書いています。

主に藤原道長の栄華を中心に描き、特定の人物の焦点を置き歴史をみる「紀伝体」の方式をとっています。(時間の流れとともに書いた歴史書は「編年体」と呼びます。)

『水鏡』『増鏡』『今鏡』と共に「四鏡」の1つに数えられています。

「花山院の出家・花山院の退位」の大まかな内容

 花山天皇は十七歳のときに天皇に即位した。しかし、誰にも知らせずに十九歳の時に花山寺に出家してしまった。

 出家する当日、月が明るかるくためらったり、手紙を取りに帰ろうとする天皇に対し、神器を既に渡してしまった粟田殿は、うそ泣きをし寺に連れて行った。

 出家が終わった後、出家し弟子になると事前に伝えていた粟田殿は逃げてしまい、花山天皇は騙され悲しんだ。粟田殿の父は、粟田殿が出家させられないよう護衛をつけ守った。

原文

 次の帝 、花山院の天皇と申しき。冷泉院の第一の皇子なり。御母、贈皇后宮懐子と申す。

 永観二年八月二十八日、位につかせ給ふ。御年十七。寛和二年丙戌六月二十二日の夜、あさましく候ひしことは、人にも知らせさせ給はで、みそかに花山寺におはしまして、御出家入道せさせ給へりしこそ。御年十九。世を保たせ給ふこと二年。そののち、二十二年おはしましき。

 あはれなることは、下りおはしましける夜は、藤壺の上の御局の小戸より出でさせ給ひけるに、有明の月のいみじく明かかりければ、「顕証にこそありけれ。いかがすべからむ。」と仰せられけるを、「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。神璽・宝剣わたり給ひぬるには。」と、粟田殿の騒がし申し給ひけるは、まだ帝出でさせおはしまさざりける先に、手づからとりて、春宮の御方にわたし奉り給ひてければ、帰り入らせ給はむことはあるまじく思して、しか申させ給ひけるとぞ。

 さやけき影を、まばゆく思し召しつるほどに、月の顔にむら雲のかかりて、少し暗がりゆきければ、「わが出家は成就するなりけり。」と仰せられて、歩み出でさせ給ふほどに、弘徽殿の女御の御文の、日ごろ破り残して御身も放たず御覧じけるを思し召し出でて、「しばし。」とて、取りに入りおはしましけるほどぞかし、粟田殿の、「いかに、かくは思し召しならせおはしましぬるぞ。ただ今過ぎば、おのづから障りも出でまうで来なむ。」と、そら泣きし給ひけるは。

次の内容は↓

【言語文化・古典探究】大鏡 〜 花山院の出家② 〜 解説と練習問題(PDFダウンロード可能)

現代語訳

 次の帝は、花山院天皇と申しあげました。冷泉院の第一皇子である。

 母君は、贈皇后宮懐子と申しあげます。永観二年八月二十八日、位におつきになられました。御年十七歳です。寛和二年丙戌の六月二十二日の夜、驚きあきれましたことに、他の人には知らせにならずに、ひそかに花山寺においでになって、出家して仏道に入られたそうです。御年十九歳。世をお治めになったこと二年。そののちに、二十二年ご存命でいらっしゃった。

 しみじみと、御退位なさった夜は、藤壺の上の御局の小戸からお出になられたところ、有明けの月の光がとても明るかったので、「あまりにもはっきりとあることよ。どうしたものだろうか。」とおっしゃったのを、「そうはいっても、取りやめなさるわけにはいきません。神璽・宝剣がお渡りになってしまったからには。」と、粟田殿がせきたて申し上げられたのは、まだ天皇がお出ましになられる前に、自ら取って、春宮の御方に渡し申し上げなさっていたので、お帰りになられるようなことがあってはならないとお思いになって、そのように申し上げなさったとのことだ。

 明るい月の光を、気が引けるとお思いになっている間に、月にむら雲がかかって、少し暗くなったので、「私の出家は成就するのだなあ。」と仰られて、歩いてお出になさるうちに、弘徽殿の女御のお手紙で、いつも破り捨てずに残して御身から離さず御覧になっていたお手紙を思い出しなさって、「しばし。」とおっしゃって、取りにお入りになられたときのこと、粟田殿が「どうしてこのようにお考えになられるのか。今が過ぎたならば、自然と差し障りも出てまいりましょう」と嘘泣きをなさった。

次の内容は↓

【言語文化・古典探究】大鏡 〜 花山院の出家② 〜 解説と練習問題(PDFダウンロード可能)

解説(ポイントのみ)

①次の帝 、花山院の天皇と申しき。冷泉院の第一の皇子なり。御母、贈皇后宮懐子と申す。

「申し」は謙譲語で、「筆者から花山天皇」への敬意。「なり」は名詞に接続しているため「断定」の助動詞。「申す」は謙譲語で、「筆者から贈皇后宮懐子」への敬意。

②永観二年八月二十八日、位につかせ給ふ。御年十七。寛和二年丙戌六月二十二日の夜、あさましく候ひしことは、人にも知らせさせ給はで、

つか「せ給ふ」は二重尊敬(最高尊敬)で、「筆者から花山天皇」への敬意。「候ひ」は丁寧語で、「筆者から読み手」への敬意。「せさせ」は「使役」の助動詞+「尊敬」の助動詞。「させ給は」は二重尊敬で、「筆者から花山天皇」への敬意。

③みそかに花山寺におはしまして、御出家入道せさせ給へりしこそ。御年十九。世を保たせ給ふこと二年。そののち、二十二年おはしましき。

入道せ「おはしまし」は尊敬語で、「筆者から花山天皇」への敬意。「せさせ」は「サ変動詞」+「尊敬」の助動詞。「させ給へ」は尊敬語で、「筆者から花山天皇」への敬意。「り」は四段已然形に接続しているため「完了」。保た「せ給ふ」は二重尊敬で、「筆者から花山天皇」への敬意。

④あはれなることは、下りおはしましける夜は、藤壺の上の御局の小戸より出でさせ給ひけるに、有明の月のいみじく明かかりければ、

「おはしまし」は尊敬語で、「筆者から花山天皇」への敬意。「させ給ひ」は二重尊敬で、「筆者から花山天皇」への敬意。

⑤「顕証にこそありけれ。いかがすべからむ。」と仰せられけるを、「さりとて、とまらせ給ふべきやう侍らず。神璽・宝剣わたり給ひぬるには。」と、

「顕証に」は「はっきりと」という意味。「けれ」は「詠嘆」の助動詞。「べから」は「適当」の助動詞。「む」は「推量」の助動詞。「仰せ」は尊敬語で、「筆者から花山天皇」への敬意。「せ給ふ」は二重尊敬で、「粟田殿から花山天皇」への敬意。「べき」は「当然」の助動詞。「給ひ」は尊敬語で、「粟田殿から花山天皇」への敬意。

⑥粟田殿の騒がし申し給ひけるは、まだ帝出でさせおはしまさざりける先に、手づからとりて、

「申し」は謙譲語で、「筆者から花山天皇」への敬意。「給ひ」は尊敬語で、「筆者から粟田殿」への敬意。「させおはしまさ」は二重尊敬で、「筆者から花山天皇」への敬意。

⑦春宮の御方にわたし奉り給ひてければ、帰り入らせ給はむことはあるまじく思して、しか申させ給ひけるとぞ。

「奉り」は謙譲語で、「筆者から春宮」への敬意。奉り「給ふ」は尊敬語で、「筆者から粟田殿」への敬意。「せ給は」は二重尊敬で、「筆者から花山天皇」への敬意。「む」は「婉曲」の助動詞。「思し」は尊敬語で、「筆者から粟田殿」への敬意。「申す」は謙譲語で、「筆者から花山天皇」への敬意。申さ「せ給ひ」は二重尊敬で、「筆者から粟田殿」への敬意。

⑧さやけき影を、まばゆく思し召しつるほどに、月の顔にむら雲のかかりて、少し暗がりゆきければ、

「影」は「月の光」を表している。「思し召し」は尊敬語で、「筆者から花山天皇」への敬意。

⑨「わが出家は成就するなりけり。」と仰せられて、歩み出でさせ給ふほどに、

「なり」は連体形に接続しているため「断定」と判断。「けり」は「詠嘆」の助動詞。「仰せられ」は二十尊敬で、「筆者から花山天皇」への敬意。「させ給ふ」は二十尊敬で、「筆者から花山天皇」への敬意。

⑩弘徽殿の女御の御文の、日ごろ破り残して御身も放たず御覧じけるを思し召し出でて、

「御覧じ」は尊敬語で、「筆者から花山天皇」への敬意。「思し召し出で」は尊敬語で、「筆者から花山天皇」への敬意。

⑪「しばし。」とて、取りに入りおはしましけるほどぞかし、粟田殿の、

「おはしまし」は尊敬語で、「筆者から花山天皇」への敬意。

⑫「いかに、かくは思し召しならせおはしましぬるぞ。ただ今過ぎば、おのづから障りも出でまうで来なむ。」と、そら泣きし給ひけるは。

「いかに」は「どうして」という意味。「思し召しなら」「せ」「おはしまし」は尊敬語で、「粟田殿から花山天皇」への敬意。「出でまうで来」は丁寧語で、「粟田殿から花山天皇」への敬意。「な」は「強意」の助動詞。「む」は「推量」の助動詞。「給ひ」は尊敬語で、「筆者から粟田殿」への敬意。

次の内容は↓

【言語文化・古典探究】大鏡 〜 花山院の出家② 〜 解説と練習問題(PDFダウンロード可能)

練習問題(PDFダウンロード可能)

問題は

①本文中にある動詞・助動詞の確認問題(品詞分解)

②読解問題

の2パターンあります。

無料でダウンロードすることができます!(できない場合は連絡ください。)

学校で学習してない文法事項や知識があった場合は解かずに次の問題を解いてください。

大鏡「花山院の出家」 品詞分解 問題①

大鏡「花山院の出家」 品詞分解 問題②

大鏡「花山院の出家」 品詞分解 問題③

大鏡「花山院の出家」 読解問題①

大鏡「花山院の出家」 読解問題②

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