沙石集の「歌ゆえに命を失ふ事」の解説と問題を無料で閲覧・ダウンロードすることができます!
教科書によっては「忠盛と兼見」というタイトルになります。
沙石集とは
「沙石集」は鎌倉時代後期の1283年に無住(ムジュウ)によって書かれた仏教説話集です。
庶民を仏教の道に導くことを目的に書かれ、仏教の教訓・教理を説明するため、道徳的な話や、笑い話、動物説話など様々な話が全十巻134話 書かれています。
「沙石集」と同じ鎌倉時代の説話には「宇治拾遺物語」や「十訓抄」、「古今著聞集」などがあります。
「歌ゆえに命を失ふ事」の大まかな内容
歌合(ウタアワセ:2人が和歌を読みそのできを競う遊び)で、天皇の側近であった忠盛と兼見という2人が、天皇から「初恋」という題材を頂き、自信のある歌を詠みます。
その場にいた人々は、2人の和歌の出来がよく、優劣をつけることができなかったため、天皇に意見を求めました。結果、兼盛の歌が選ばれました。
それ以降、敗れた忠見は病がちになり、死んでしまいました。
最後にその出来事に対して、1つのことに捉われることはよくないが、1つのことに心をかけることに心が動かされるとまとめています。
原文
天徳の御歌合のとき、兼盛、忠見、ともに御随身にて、左右に番ひてけり。初恋といふ題を給はりて、忠見、名歌詠み出したりと思ひて、兼盛もいかでこれを行うの歌詠むべきとぞ思ひける。
恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知らずこそ思ひそめしか
さて、すでに御前にて講じて、判ぜられるに、兼盛が歌に、
つつめども色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで
判者ども、名歌なりければ、判じわづらひて、天気をうかがひけるに、帝、忠見が歌をば、両三度御詠ありけり。兼盛が歌をば、多反御詠ありけるとき、天気左にありとて、兼盛勝ちにけり。
忠見、心憂くおぼえて、心ふさがりて、不食の病つきてけり。頼みなきよし聞きて、兼盛とぶらひければ、「別の病にあらず。御歌合のとき、名歌詠み出だしておぼえ侍りしに、殿の『ものや思ふと人の問ふまで』に、あはと思ひて、あさましくおぼえしより、胸ふさがりて、かく重り侍りぬ。」と、つひにみまかりにけり。
現代語訳
天徳の歌合のときに、兼盛と忠見は、ともに警護役として左方と右方に加わっていた。初恋という題材をいただき、忠見は、名歌を詠むことができたと思い、兼盛もどうしてこれほどのよい歌を詠むことができようか、いやできないと思った。
恋をしているという噂が、早くも立ってしまった。誰にも知られないようにと想い始めたのに。
さて、すでに天皇の御前で歌を読み上げて、判定なさっていたときに、兼盛の歌として
隠していたけれど、顔色に出てしまった。私の恋心は、物想いをしているのかと人が問うほどに
判者たちは、(どちらも)名歌だったので優越をつけかねて、天皇のご意向を伺ったところ、帝は、忠見の歌を、二度三度お詠みになられた。兼盛の歌を、何回も繰り返しお詠みになられたときに、天皇のご意向は左方にあるとされ、兼盛が勝ったのだった。
忠身は、つらく思い、心をふさぎこみ、食べられなくなる病になってしまった。病気が重く回復の期待が見込まれない旨を聞いて、兼盛がお見舞いにいったところ、
「特別な病気ではありません。御歌合のときに、名歌を詠み出せたと自信がありましたが、あなたの、『ものや思ふと人の問ふまで』という歌に、あぁと思って、驚いたときから、胸がふさがって、このように重病になってしまったのです。」
と言って、ついには亡くなってしまった。
解説(ポイントのみ)
①天徳の御歌合のとき、兼盛、忠見、ともに御随身にて、左右に番ひてけり。
天徳の御歌合は村上天皇の960年頃。御随身(ミズイシン)は上皇などの護衛をする官人。「番ひ」はイ音便化している。
②初恋といふ題を給はりて、忠見、名歌詠み出したりと思ひて、兼盛もいかでこれを行うの歌詠むべきとぞ思ひける。
「給はる」は謙譲語で筆者から帝への敬意を表す。「べき」は可能の助動詞。
③恋すてふわが名はまだき立ちにけり人知れずこそ思ひそめしか
「名」は噂を、「まだき」は早くを意味する。和歌になるため「けり」は詠嘆の助動詞。「こそ」+已然形で「~だけれでも(逆説)」を意味する。三句切れで、倒置が使われている。
④さて、すでに御前にて講じて、判ぜられるに、兼盛が歌に、
「られ」は判定されるという意味になるので「受身」の助動詞。
⑤つつめども色に出でにけりわが恋はものや思ふと人の問ふまで
和歌になるため「けり」は詠嘆の助動詞。三句切れで、倒置が使われている。
⑥判者ども、名歌なりければ、判じわづらひて、天気をうかがひけるに、帝、忠見が歌をば、両三度御詠ありけり。
已然形「けれ」+「ば」で「~なので」(順接確定)と訳す。「天気」は「帝の御意向」を意味する。
⑦兼盛が歌をば、多反御詠ありけるとき、天気左にありとて、兼盛勝ちにけり。
⑧忠見、心憂くおぼえて、心ふさがりて、不食の病つきてけり。頼みなきよし聞きて、兼盛とぶらひければ、
「心憂く」は「つらい」という意味。已然形「けれ」+「ば」で「~なので」(順接確定)と訳す。
⑨「別の病にあらず。御歌合のとき、名歌詠み出だしておぼえ侍りしに、殿の『ものや思ふと人の問ふまで』に、あはと思ひて、あさましくおぼえしより、胸ふさがりて、かく重り侍りぬ。」
「侍り」は丁寧語で忠見から兼盛への敬意。「や」が係助詞で「思ふ」が結びの語。
⑩と、つひにみまかりにけり。
練習問題(PDFダウンロード可能)
問題は
①本文中にある動詞・助動詞の確認問題(品詞分解)
②読解問題
の2パターンあります。
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沙石集「歌ゆへに命を失ふ事」 読解問題②
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