【言語文化・古典探究】十訓抄 〜大江山〜 解説と練習問題(PDFダウンロード可能)

古典読解

十訓抄の「大江山(小式部内侍が大江山の歌のこと)」の解説と問題を無料で閲覧・ダウンロードすることができます!

十訓抄とは

「十訓抄」は鎌倉時代中期の1252年ごろに書かれた説話集です。

作者はわかっておらず、湯浅宗業や菅原為長などの説があります。

三巻十篇の構成で、少年たちに儒学的な処世の道を示すため

①人に恵みを施すべき事 …人に親切にすること

②憍慢を離るべき事 …偉そうにしないこと

③人倫を侮るべからざる事 …人を見下さないこと

④人の上の多言等を誡むべき事 …人の悪口を控えること

⑤朋友を撰ぶべき事 …いい友達を選ぶこと

⑥忠信廉直の旨を存すべき事 …正直で誠実であること

⑦思慮を専らにすべき事 …よく考えること

⑧諸事に堪忍すべき事 …我慢すること

⑨怨望を停むべき事 …しつこく頼まないこと

⑩才能・芸業を庶幾すべき事 …自分の才能を磨くこと

の10個の教えに分けて、さまざまな説話が収録されています。

同じ時代に書かれた説話には「沙石集」や「発心集」があります。

「大江山」の大まかな内容

和泉式部が夫の藤原保昌とともに、丹後の国へ行っている際、京都で歌合わせがありました。

歌合せには京都に残っていた和泉式部の娘 小式部内侍が出席しました。有名な歌人である母もつ小式部内侍には周囲からの注目が集まりますが、定頼の中納言に「母の使いはまだ来ないのか」とからかわれてしまいます。それに対し、小式部内侍は見事な句で見返し、和歌の世界を名を広めたのでした。

原文

 和泉式部、保昌が妻にて、丹後に下りけるほどに、京に歌合ありけるを、小式部内侍、歌詠みにとられて、歌を詠みけるに、定頼の中納言たはぶれて、小式部内侍ありけるに、「丹後へ遣はしける人は参りたりや。いかに心もとなく思すらむ。」と言ひて、局の前を過ぎられけるを、御簾より半らばかり出でて、わづかに直衣の袖を控へて、

  大江山いくのの道の遠ければまだふみもみず天の橋立

と詠みかけけり。思はずに、あさましくて、「こはいかに、かかるやうやはある。」とばかり言ひて、返歌にも及ばず、袖を引き放ちて、逃げられけり。小式部、これより、歌詠みの世におぼえ出で来にけり。

 これはうちまかせて理運のことなれども、かの卿の心には、これほどの歌、ただいま詠み出だすべしとは、知られざりけるにや。

現代語訳

 和泉式部が、保昌の妻として、丹後へ下った頃に、京で歌合があったところ、小式部内侍が、歌詠みに選ばれて、歌を詠んだが、定頼中納言がふざけて、小式部内侍が局にいた時に、「丹後へおやりになった人は参りましたか。どんなに待ち遠しくお思いのことでしょう。」と言って、局の前を通り過ぎられたのを、御簾から半分ばかり乗り出し、少し直衣の袖を引っ張って、

  大江山を越え、生野を通って行く道が遠いので、天の橋立はまだ踏んでみたことはありませんし、手紙もまだ見ていません。

 と詠みかけた。思いもしなかったことに驚き、「これはどういうことだ。こんなことがあるだろうか、いや、あるはずはない。」とだけ言って、返歌もできず、袖を引き払ってお逃げになった。小式部は、この時から歌詠みの世界に名声が広まった。

 こうしたことは、当然の道理であったけれど、あの卿の心には、これほどの歌をすぐに詠みすることができるとは、お考えにならなかったのであろうか。

解説(ポイントのみ)

①和泉式部、保昌が妻にて、丹後に下りけるほどに、京に歌合ありけるを、小式部内侍、歌詠みにとられて、

「が」は連体格で、「保昌の妻」と訳す。「妻」は「め」と読む。「丹後」は現在の京都府。「れ」は「選ばれる」と訳すため、「受身」と判断する。

②歌を詠みけるに、定頼の中納言たはぶれて、小式部内侍ありけるに、

「たはぶれ」は「ふざける・からかう」を意味する。

③「丹後へ遣はしける人は参りたりや。いかに心もとなく思すらむ。」と言ひて、

「参り」は尊敬語で、「定頼中納言から小式部内侍」への敬意。「たり」は連用形に接続しているため「完了」と判断する。「思す」は尊敬語で、「定頼中納言から小式部内侍」への敬意。

④局の前を過ぎられけるを、御簾より半らばかり出でて、わづかに直衣の袖を控へて、

「局」は「つぼね」と読み、宮中にある仕切りをして設けた部屋。「られ」は尊敬の助動詞で、「作者から定頼中納言」への敬意。「御簾」は「みす」と読む。「直衣」は「のうし」と読み、「貴族男性の服」を意味する。

⑤大江山いくのの道の遠ければまだふみもみず天の橋立

「大江山」は京都にある山。「いくの」は掛詞で、「生野」という地名と「行くの」という動詞の二つの意味がある。「ば」は已然形接続なので「順接確定条件」。「ふみ」は掛詞で、手紙を意味する「文」と「踏み」という動詞の2つの意味がある。

⑥と詠みかけけり。

⑦思はずに、あさましくて、「こはいかに、かかるやうやはある。」とばかり言ひて、返歌にも及ばず、袖を引き放ちて、逃げられけり。

「こ」は指示語で、「小式部内侍が素晴らしい返歌をしたこと」を指している。「やは」は疑問・反語の係助詞「か」と 強意の係助詞「は」が接続したもの。「及ばず」は「できない」と訳す。「られ」は尊敬の助動詞で「作者から定頼中納言」への敬意。

⑧小式部、これより、歌詠みの世におぼえ出で来にけり。

「に」は連用形接続なので「完了」の助動詞と判断する。

⑨これはうちまかせて理運のことなれども、

「なれ」は体言に接続しているため「断定」の助動詞と判断。

⑩かの卿の心には、これほどの歌、ただいま詠み出だすべしとは、知られざりけるにや。

「べし」は「読むことができる」という意味になるため「可能」と判断。「れ」は「尊敬」の助動詞。

練習問題(PDFダウンロード可能)

問題は

①本文中にある動詞・助動詞の確認問題(品詞分解)

②読解問題

の2パターンあります。

無料でダウンロードすることができます!(できない場合は連絡ください。)

学校で学習してない文法事項や知識があった場合は解かずに次の問題を解いてください。

十訓抄「大江山」 品詞分解 問題

十訓抄「大江山」 読解問題① 

十訓抄「大江山」 読解問題②

質問・要望は ↓のチャットで気軽に聞いてください!(オープンチャットなので匿名です)

LINEオープンチャット 「古典(言語文化・古典探究)の勉強部屋」

誤字脱字や模範解答の間違いなどがある場合があります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました