伊勢物語の「筒井筒」の解説と問題を無料で閲覧・ダウンロードすることができます!
伊勢物語とは
「伊勢物語」は平安時代である900年前後に書かれたとされています。(諸説あり)
同じ時期に書かれた作品は「竹取物語」や「古今和歌集」などがあります。
ジャンルは「歌物語」になります。歌物語の中では最古の作品で、同じ歌物語である『大和物語』など後世にできた作品に大きな影響を与えました。
作者は明らかになっていないものの、六歌仙の1人である「在原業平」という実在した歌人がモデルになっているとされています。
内容は在原業平だと思われる主人公の「男」が元服(成人すること)し、恋愛をして、亡くなるまでを書いた、「一代記」の形をとっています。全125段の小話でできており、和歌が含まれているのが特徴です。
「筒井筒」の大まかな内容
幼なじみの男女は和歌を詠み交わして結ばれるが、男は親を失った妻を残して高安に通うようになる。妻の変わらぬ愛を知り男は通いをやめる。一方、高安の女は男を待ち続け和歌に思いを詠むが、男は二度と通わなくなった。
原文
昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとにいでて遊びけるを、大人になりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、男はこの女をこそ得めと思ふ、女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども聞かでなむありける。さて、この隣の男のもとより、かくなむ、
筒井筒井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
女、返し、
比べ来し振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずして誰か上ぐべき
など言ひ言ひて、つひに本意のごとくあひにけり。
さて、年ごろ経るほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、もろともに言ふかひなくてあらむやはとて、河内の国、高安の郡に、行き通ふ所出できにけり。さりけれど、このもとの女、悪しと思へる気色もなくて、出だしやりければ、男、異心ありてかかるにやあらむと思ひ疑ひて、前栽の中に隠れゐて、河内へ往ぬる顔にて見れば、この女、いとよう化粧じて、うち眺めて、
風吹けば沖つ白波たつた山 夜半にや君がひとり越ゆらむ
と詠みけるを聞きて、限りなくかなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり。まれまれかの高安に来てみれば、初めこそ心にくくもつくりけれ、今はうちとけて、手づから飯匙取りて、笥子のうつはものに盛りけるを見て、心憂がりて行かずなりにけり。さりければ、かの女、大和の方を見やりて、
君があたり見つつを居らむ生駒山雲な隠しそ雨は降るとも
と言ひて見出だすに、からうじて、大和人、「来む。」と言へり。喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、
君来むと言ひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞ経る
と言ひけれど、男住まずなりにけり。
現代語訳
昔、田舎で生計を立てていた人の子どもが、井戸のそばに出て遊んでいたが、大人になったので、男も女も互いに恥ずかしがっていたけれども、男はこの女を妻にしようと思う。女はこの男をと思いつつ、親が結婚させようとしても、聞き入れないでいた。さて、この隣の男のもとから、このように、
筒井の井筒と測り比べた私の背丈も、井筒の高さを超えてしまったようですね、あなたを見ないでいるうちに。
女の、返歌、
比べ合ってきた振り分け髪も肩を過ぎてしまいました。あなたでなくて誰が上げましょうか
などと詠み合って、とうとう念願どおりに結婚した。
さて、何年かたつうちに、女は、親が死んで、頼れるものがなくなったので、一緒に貧しい状態でおられようかということで、河内の国、高安の郡に、通っていく所ができてしまった。しかしながら、このもとの女は、不快に思っている様子もなくて、送り出してやったので、男は、浮気心を寄せていてこのようなのであろうかと思い疑って、庭の植え込みの中に隠れて、河内へ行ったふりをして見ていると、この女は、たいそう念入りに化粧をして、もの思いにふけりながらぼんやり眺めて、
風が吹くと沖の白波が立つ、その名の竜田山を、この夜中にあなたはひとりで越えていくのでしょうか。
と詠んだのを聞いて、この上なくいとしいと思って、河内へも行かなくなってしまった。
たまたま、あの高安に来てみると、初めは奥ゆかしく取り繕っていたけれど、今では気を許して、自分の手でしゃもじを取って、飯を盛る器に盛っていたのを見て、罪悪感を覚えて行かなくなってしまった。 そういうわけだったので、あの女は、大和の方を眺めて、
あなたがいらっしゃる辺りを見続けておりましょう。生駒山、雲を隠すな。たとえ雨が降ったとしても。
と詠んで外を見ると、ようやく、大和の人が、「行こう。」と言った。喜んで待つが、何度も過ぎてしまったので、
あなたが来ようと言った夜が過ぎてしまったのでもう期待しないが、恋しく思いながら過ごしている。
と詠んだけれども、男は行かなくなってしまった。
解説(ポイントのみ)
①昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとにいでて遊びけるを、大人になりにければ、男も女も恥ぢかはしてありけれど、
「に」は連用形に接続しているため「完了」の助動詞。「ば」は已然形に接続しているため順接確定条件。
②男はこの女をこそ得めと思ふ、女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども聞かでなむありける。
「こそ」は強調の係助詞で、結びの語は「め」。「め」は下に「思ふ」とあるので「意志」の助動詞と判断する。「で」は打消の接続助詞。「なむ」は強意の係助詞で、結びの語は「ける」。
③さて、この隣の男のもとより、かくなむ、筒井筒井筒にかけしまろがたけ過ぎにけらしな妹見ざるまに
「なむ」は強意の係助詞で、結びの語は省略されている。「な」は詠嘆の終助詞。
④女、返し、比べ来し振り分け髪も肩過ぎぬ君ならずして誰か上ぐべき
「ぬ」は連用形に接続しているため「完了」の助動詞。「なら」は体言に接続しているため「断定」の助動詞。「か」は反語の係助詞で、結びの語は「べき」。「べき」は「推量」の助動詞。
⑤など言ひ言ひて、つひに本意のごとくあひにけり。
「ごとく」は「比況」の助動詞。「に」は連用形に接続しているため「完了」の助動詞。
⑥さて、年ごろ経るほどに、女、親なく、頼りなくなるままに、もろともに言ふかひなくてあらむやはとて、河内の国、高安の郡に、行き通ふ所出できにけり。
「む」は「意志」の助動詞。「やは」は「反語」の係助詞。「に」は連用形に接続しているため「完了」の助動詞。
⑦さりけれど、このもとの女、悪しと思へる気色もなくて、出だしやりければ、男、異心ありてかかるにやあらむと思ひ疑ひて、
思へ「る」は四段活用命令形に接続しているため「存続」の助動詞。かかる「に」は連体形に接続しているため「断定」の助動詞。「や」は疑問の係助詞で、結びの語は「む」。「む」は「推量」の助動詞。
⑧前栽の中に隠れゐて、河内へ往ぬる顔にて見れば、この女、いとよう化粧じて、うち眺めて、
「ば」は已然形に接続しているため「順接確定条件」。
⑨風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君がひとり越ゆらむ
「たつ」は「立つ」と「辰」の掛詞。「や」は疑問の係助詞で、結びの語は「らむ」。「らむ」は「現在推量」の助動詞。
⑩と詠みけるを聞きて、限りなくかなしと思ひて、河内へも行かずなりにけり。まれまれかの高安に来てみれば、
「に」は連用形に接続しているため「完了」の助動詞。
⑪初めこそ心にくくもつくりけれ、今はうちとけて、手づから飯匙取りて、笥子のうつはものに盛りけるを見て、心憂がりて行かずなりにけり。
「こそ」は強意の係助詞で、結びの語は「けれ」。「に」は連用形に接続しているため「完了」の助動詞。
⑫さりければ、かの女、大和の方を見やりて、
⑬君があたり見つつを居らむ生駒山雲な隠しそ雨は降るとも
「む」は「意志」の助動詞。「な~そ」は「禁止」を意味する。
⑭と言ひて見出だすに、からうじて、大和人、「来む。」と言へり。喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、
「む」は「意志」の助動詞。「り」は四段活用命令形に接続しているため「完了」の助動詞。
⑮君来むと言ひし夜ごとに過ぎぬれば頼まぬものの恋ひつつぞ経る
「む」は「意志」の助動詞。「ぬ」は未然形に接続しているため「打消」の助動詞。「ぞ」は強意の係助詞で、結びの語は「経る」。
⑯と言ひけれど、男住まずなりにけり。
「に」は連用形に接続しているため「完了」の助動詞。
問題(PDFダウンロード可能)
問題は
①本文中にある動詞・助動詞の確認問題(品詞分解)
②読解問題
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伊勢物語「筒井筒」 読解問題②
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