大鏡の「三船の才・公任の誉れ」の解説と問題を無料で閲覧・ダウンロードすることができます!
大鏡とは
「大鏡」は平安時代後期の白河院の時に書かれた歴史物語です。
作者は不詳で、摂関家に近い男性官人が書いたとする説が有力です。
内容は850年の文徳天皇から、1025年の後一条天皇までの14人の天皇が在位した176年間の歴史を、大宅世継(オオヤケノヨツギ)と夏山繁樹(ナツヤマシゲキ)が対話し、それを若侍が批評するという形式で書いています。
主に藤原道長の栄華を中心に描き、特定の人物の焦点を置き歴史をみる「紀伝体」の方式をとっています。(時間の流れとともに書いた歴史書は「編年体」と呼びます。)
『水鏡』『増鏡』『今鏡』と共に「四鏡」の1つに数えられています。
「三船の才・公任の誉れ」の大まかな内容
入道殿が大井川で舟遊びを催し、漢文・和楽器・和歌の舟に分けて名人を乗せた。大納言は和歌の舟を選び歌を詠んだが、後に漢文の舟ならさらに名声を得られたと悔やみ、入道殿に注目されたことを誇った
原文
一年、入道殿の大井川に逍遥せさせ給ひしに、作文の船、管絃の船、和歌の船と分かたせ給ひて、その道にたへたる人々を乗せさせ給ひしに、この大納言の参り給へるを、入道殿、「かの大納言、いづれの船にか乗らるべき。」とのたまはすれば、「和歌の船に乗り侍らむ。」とのたまひて、詠み給へるぞかし、
小倉山嵐の風の寒ければ紅葉の錦着ぬ人ぞなき
申し受け給へるかひありて、あそばしたりな。御自らものたまふなるは、「作文のにぞ乗るべかりける。さてかばかりの詩をつくりたらましかば、名の上がらむこともまさりなまし。口惜しかりけるわざかな。さても、殿の、『いづれにかと思ふ。』とのたまはせしになむ、我ながら心おごりせられし。」とのたまふなる。一事の優るるだにあるに、かくいづれの道も抜け出で給ひけむは、いにしへも侍らぬことなり。
現代語訳
ある年、入道殿が大井川で舟遊びをなさったときに、漢文の舟、和楽器の舟、和歌の舟とお分けになって、その道に優れている人々をお乗せになったが、大納言がいらっしゃったので、入道殿が、「あの大納言は、どの舟に乗るのだろうか。」と仰ったところ、「和歌の舟に乗りましょう。」と仰って、お詠みになられた、
小倉山や嵐山から吹く風が寒いので、紅葉が散って、錦の着物を着ていないものはいない
自ら申し出て御受けになったかいがあって、お詠みになったなあ。ご自身でも仰ったということには、「漢文の舟に乗るべきだったなぁ。そしてこれぐらいのの漢詩を作ったならば、名声の上がることもよりあっただろうに。残念なことだ。それにしても、入道殿が、『どの舟に乗るのか。』と仰られたのは、我ながら得意気にならずにはいられなかった。」と仰られたそうだ。一つの事に優れることでさえまれなのに、このようにどの分野でも優れていらっしゃったとかいうことは、昔にもないことです。
解説(ポイントのみ)
①一年、入道殿の大井川に逍遥せさせ給ひしに、作文の船、管絃の船、和歌の船と分かたせ給ひて、
「入道殿」は藤原道長のこと。「逍遥せ」が「しょうよう」と読み、「舟遊びをする」という意味。「させ給ひ」は二重尊敬で、「筆者から入道殿」への敬意。「作文」は「漢文を作る」こと。
②その道にたへたる人々を乗せさせ給ひしに、この大納言の参り給へるを、
「たる」は連用形に接続しているため「存続」の助動詞。「させ給ひ」は二重尊敬で、「筆者から入道殿」への敬意。「大納言」は藤原公任のこと。「参り」は謙譲語で、「筆者から入道殿」への敬意。「給へ」は尊敬語で、「筆者から大納言」への敬意。「る」は四段活用已然形に接続しているため「存続」の助動詞。
③入道殿、「かの大納言、いづれの船にか乗らるべき。」とのたまはすれば、
船に「か」は疑問の係助詞で、結びの語は「べき」。「る」は「尊敬」の助動詞で、「入道殿から大納言」への敬意。「べき」は「意志」の助動詞。「のたまはすれ」は尊敬語で、「筆者から入道殿」への敬意。
④「和歌の船に乗り侍らむ。」とのたまひて、詠み給へるぞかし、
「侍ら」は丁寧語で、「大納言から入道殿」へ敬意。「む」は「意志」の助動詞。「のたまふ」は尊敬語で、「筆者から大納言」への敬意。「給へ」は尊敬語で。「筆者から大納言」への敬意。「る」は四段活用已然形に接続しているため「完了」の助動詞。
⑤小倉山嵐の風の寒ければ紅葉の錦着ぬ人ぞなき
「ぬ」は未然形に接続しているため「打消」の助動詞。「ぞ」は強意の係助詞で、結びの語は「なき」。
⑥申し受け給へるかひありて、あそばしたりな。御自らものたまふなるは、
「申し受け」は謙譲語で、「筆者から入道殿」への敬意。「給へ」は尊敬語で、「筆者から大納言」への敬意。「あそばし」は尊敬語で、「筆者から大納言」への敬意。「たり」は連用形に接続しているため「完了」の助動詞。「のたまふ」は尊敬語で、「筆者から大納言」への敬意。「なる」は終止形に接続しているため「伝聞」の助動詞。
⑦「作文のにぞ乗るべかりける。さてかばかりの詩をつくりたらましかば、名の上がらむこともまさりなまし。
「ぞ」は強意の係助詞で、結びの語は「ける」。「べかり」は「適当」の助動詞。「たら」は連用形に接続しているため「完了」の助動詞。「む」は「婉曲」の助動詞。
⑧口惜しかりけるわざかな。さても、殿の、『いづれにかと思ふ。』とのたまはせしになむ、我ながら心おごりせられし。」
「ける」は「詠嘆」の助動詞。いづれに「か」は疑問の係助詞で、結びの語は「思ふ」。「のたまはせ」は尊敬語で、「大納言から入道殿」への敬意。「なむ」は強意の係助詞で、結びの語は「し」。「られ」は「自発」の助動詞。
⑨とのたまふなる。一事の優るるだにあるに、かくいづれの道も抜け出で給ひけむは、いにしへも侍らぬことなり。
「のたまふ」は尊敬語で、「筆者から大納言」への敬意。「なる」は終止形に接続しているため「断定」の助動詞。「給ひ」は尊敬語で、「筆者から大納言」への敬意。「けむ」は「過去婉曲」の助動詞。「侍ら」は丁寧語で、「筆者から読み手」への敬意。「ぬ」は未然形に接続しているため「打消」の助動詞。「なり」は体言に接続しているため「断定」の助動詞。
練習問題(PDFダウンロード可能)
問題は
①本文中にある動詞・助動詞の確認問題(品詞分解)
②読解問題
の2パターンあります。
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大鏡「三船の才・公任の誉れ」 読解問題②
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