【言語文化・古典探究】大鏡 〜 南院の競射・弓争ひ 〜 解説と練習問題(PDFダウンロード可能)

古典読解

大鏡の「南院の競射・道長と伊周・弓争ひ」の解説と問題を無料で閲覧・ダウンロードすることができます!

大鏡とは

「大鏡」は平安時代後期の白河院の時に書かれた歴史物語です。

作者は不詳で、摂関家に近い男性官人が書いたとする説が有力です。

内容は850年の文徳天皇から、1025年の後一条天皇までの14人の天皇が在位した176年間の歴史を、大宅世継(オオヤケノヨツギ)と夏山繁樹(ナツヤマシゲキ)が対話し、それを若侍が批評するという形式で書いています。

主に藤原道長の栄華を中心に描き、特定の人物の焦点を置き歴史をみる「紀伝体」の方式をとっています。(時間の流れとともに書いた歴史書は「編年体」と呼びます。)

『水鏡』『増鏡』『今鏡』と共に「四鏡」の1つに数えられています。

「南院の競射・道長と伊周・弓争ひ」の大まかな内容

藤原伊周が弓遊びをしたとき、藤原道長がやってきた。道隆は驚いたものの、道長をもてなして、官位が高い伊周よりも先に矢を射させたら、道長が2本勝ってしまった。道隆や仕えている人々の勧めで、2本追加で射つと、道長の矢が的の中心に命中した。伊周は、手が震えてしまったのか、的に当たらなかった。道長は、2本目も同じように中心に当ててしまい、すっかり気まずい雰囲気になってしまった。

原文

 帥殿の南院にて人々集めて弓あそばししに、この殿渡らせ給へれば、思ひかけずあやしと、中関白殿おぼし驚きて、いみじう饗応し申させ給うて、下臈におはしませど、前に立て奉りて、まづ射させ奉らせ給ひけるに、帥殿の矢数今二つ劣り給ひぬ。中関白殿、また御前に候ふ人々も、「いま二度延べさせ給へ。」と申して、延べさせ給ひけるを、やすからずおぼしなりて、「さらば、延べさせ給へ。」と仰せられて、また射させ給ふとて、仰せらるるやう、「道長が家より、帝・后立ち給ふべきものならば、この矢当たれ。」と仰せらるるに、同じものを中心には当たるものかは。次に、帥殿射給ふに、いみじう臆し給ひて、御手もわななくにや、的の辺りにだに近く寄らず、無辺世界を射給へるに、関白殿、色青くなりぬ。また入道殿射給ふとて、「摂政・関白すべきものならば、この矢当たれ。」と仰せらるるに、初めの同じやうに、的の破るばかり、同じ所に射させ給ひつ。饗応し、もてはやし聞こえさせ給ひつる興もさめて、こと苦うなりぬ。父大臣、帥殿に、「なにか射る。な射そ、な射そ。」と制し給ひて、ことさめにけり。

現代語訳

 帥殿(藤原伊周)が南の院で人々を集めて競射をなさった時に、この殿(藤原道長)がおいでになったので、思いがけず不思議なことだと、中関白殿は驚きになって、たいそうもてなし申し上げなさって、官位が低くいらしゃったが、先にお立て申し上げて、最初に射させ申し上げなさったところ、帥殿の(的に当たった)矢の数が二本だけ劣りなさった。中関白殿、また御前に仕える人々も、「もう二度延なさいませ。」と申して、延長なさったのを、心穏やかではない気持ちになられて、「それでは、延長なさいませ。」と仰って、また矢を射なさろうとして、仰られることには、「道長の家から、天皇や皇后がお立ちになるはずならば、、この矢よ当たれ。」と仰ると、同じ当たりとはいっても、的の中心に当たるではないか。次に、帥殿が射られが、たいそう気後れなさって、御手も震えたからであろうか、的のあたりの近くにさえ行かず、でたらめな方向を射なさったので、関白殿は、顔色が青くなってしまった。再び入道殿が矢を射なさるということで、「摂政・関白の地位につくはずであれば、この矢よ当たれ。」と仰ったところ、初めの矢と同じように、的が壊れるほど、同じところに射なさった。機嫌をお取りし、もてなし申し上げなさった興もさめて、気まずくなってしまった。父の大臣は、帥殿に、「どうして射るのか。射るな。射るな。」とお止めになられて、しらけてしまいました。

解説(ポイントのみ)

①帥殿の南院にて人々集めて弓あそばししに、この殿渡らせ給へれば、思ひかけずあやしと、

「帥殿」は藤原伊周のこと。「南院」は「みなみのいん」と読み、伊周の父 道隆の家を指している。「あそばし」は尊敬語で「筆者から帥殿」への敬意。「この殿」は藤原道長のこと。「せ給へ」は尊敬の助動詞+尊敬語で「二重敬語(最高尊敬)」になり、「作者から道長」への敬意。

②中関白殿おぼし驚きて、いみじう饗応し申させ給うて、下臈におはしませど、

「中関白殿」は藤原道隆のこと。「おぼし驚き」は尊敬語で「筆者から中関白殿」への敬意。「申さ」は謙譲語で、「作者から道長」への敬意。「せ給へ」は尊敬の助動詞+尊敬語で「二重敬語(最高尊敬)」になり、「作者から道隆」への敬意。「下臈」は「げろう」と読み、身分の低いものを意味する。「おはしませ」は尊敬語で、「筆者から道長」への敬意。

③前に立て奉りて、まづ射させ奉らせ給ひけるに、帥殿の矢数今二つ劣り給ひぬ。

立て「奉り」は謙譲語で、「筆者から道長」への敬意。させ「奉ら」は謙譲語で、「筆者から道長」への敬意。「せ給へ」は尊敬の助動詞+尊敬語で「二重敬語(最高尊敬)」になり、「作者から道隆」への敬意。「給ひ」は尊敬語で、「筆者から伊周」への敬意。「ぬ」は連用形接続なので「完了」。

④中関白殿、また御前に候ふ人々も、「いま二度延べさせ給へ。」と申して、

「候ふ」は謙譲語で、「筆者から道隆」への敬意。「させ給へ」は尊敬の助動詞+尊敬語で「二重敬語(最高尊敬)」になり、「作者から道長」への敬意。「申し」は謙譲語で、「作者から道長」への敬意。

⑤延べさせ給ひけるを、やすからずおぼしなりて、「さらば、延べさせ給へ。」と仰せられて、

「させ給ひ」は尊敬の助動詞+尊敬語で「二重敬語(最高尊敬)」になり、「作者から道隆」への敬意。「おぼしなり」は尊敬語で、「筆者から道長」への敬意。「仰せ」は尊敬語で「筆者から道長」への敬意。「られ」は尊敬の助動詞で、「筆者から道長」への敬意。

⑥また射させ給ふとて、仰せらるるやう、「道長が家より、帝・后立ち給ふべきものならば、この矢当たれ。」

「させ給ふ」は尊敬の助動詞+尊敬語で「二重敬語(最高尊敬)」になり、「作者から道長」への敬意。「仰せ」は尊敬語、「らるる」は尊敬の助動詞で「筆者から道長」への敬意。「給ふ」は尊敬語で、「道長から道長の子孫」への敬意。「べき」は当然の助動詞。

⑦と仰せらるるに、同じものを中心には当たるものかは。

「仰せ」は尊敬語、「らるる」は尊敬の助動詞で「筆者から道長」への敬意。「中心」は「なから」と読む。

⑧次に、帥殿射給ふに、いみじう臆し給ひて、御手もわななくにや、的の辺りにだに近く寄らず、

「給ふ」「給ひ」は尊敬語で、「筆者から伊周」への敬意。「に」は断定の助動詞。

⑨無辺世界を射給へるに、関白殿、色青くなりぬ。また入道殿射給ふとて、「摂政・関白すべきものならば、この矢当たれ。」と仰せらるるに、

「無辺世界」は「でたらめ」を意味する。「給へ」は尊敬語で、「筆者から伊周」への敬意。「る」は完了の助動詞。「色」は「顔色」を意味する。「ぬ」は連用形接続なので「完了」の助動詞。「給ふ」は尊敬語で、「筆者から道長」への敬意。「べき」は当然の助動詞。

⑩初めの同じやうに、的の破るばかり、同じ所に射させ給ひつ。

「させ給ふ」は尊敬の助動詞+尊敬語で「二重敬語(最高尊敬)」になり、「作者から道長」への敬意。

⑪饗応し、もてはやし聞こえさせ給ひつる興もさめて、こと苦うなりぬ。

「聞こえ」は謙譲語で、「筆者から道長」への敬意。「させ給ふ」は尊敬の助動詞+尊敬語で「二重敬語(最高尊敬)」になり、「作者から道隆」への敬意。「ぬ」は連用形接続なので「完了」。

⑫父大臣、帥殿に、「なにか射る。な射そ、な射そ。」と制し給ひて、ことさめにけり。

「な~そ」で「~」するなという意味。「給ひ」は尊敬語で、「筆者から道隆」への敬意。

練習問題(PDFダウンロード可能)

問題は

①本文中にある動詞・助動詞の確認問題(品詞分解)

②読解問題

の2パターンあります。

無料でダウンロードすることができます!(できない場合は連絡ください。)

学校で学習してない文法事項や知識があった場合は解かずに次の問題を解いてください。

大鏡「南院の競射・道長と伊周・弓争ひ」 品詞分解 問題

大鏡「南院の競射・道長と伊周・弓争ひ」 読解問題①

大鏡「南院の競射・道長と伊周・弓争ひ」 読解問題②

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